○久留米市建築紛争の予防と調整に関する条例
平成14年12月24日
久留米市条例第38号
目次
第1章 総則(第1条―第6条)
第2章 建築主等の配慮等(第7条―第9条)
第3章 建築計画等の周知の手続(第10条―第14条)
第4章 中高層建築物等及びワンルーム形式集合住宅の建築に係る指導(第15条―第18条)
第5章 調整(第19条―第22条)
第6章 調停(第23条―第30条)
第7章 指導及び勧告等(第31条・第32条)
第8章 雑則(第33条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、中高層建築物、劇場等、携帯電話中継基地局鉄塔及びワンルーム形式集合住宅の建築に関し、建築主等が配慮すべき事項、建築計画等の周知の手続、本市が行う指導、建築紛争の調整及び調停に関する手続その他必要な事項を定めることにより、建築紛争の予防と調整を図り、もって市民の良好な近隣関係を保持するとともに、安全で快適な居住環境の保全及び形成に資することを目的とする。
(1) 中高層建築物 高さが12メートルを超える建築物をいう。
(2) 劇場等 劇場、映画館、演芸場、カラオケボックス、ぱちんこ屋、ゲームセンター等の娯楽の用途に供する床面積が100平方メートルを超える建築物をいう。
(3) 携帯電話中継基地局鉄塔 高さが15メートルを超える携帯電話中継基地局鉄塔をいう。
(4) 中高層建築物等 中高層建築物、劇場等及び携帯電話中継基地局鉄塔をいう。
(5) ワンルーム形式集合住宅 2以上の階数を有し、かつ、専用床面積が25平方メートル以下の住戸の数が10戸(都市計画法(昭和43年法律第100号)第8条第1項第1号の商業地域にあっては20戸)を超える集合住宅をいう。
(6) 建築主等 建築主、設計者、工事監理者、工事施工者及び管理者をいう。
(7) 近隣住民 次に掲げる土地にある建築物の所有者及び居住者並びに当該土地の所有者(当該土地に建築物がない場合に限る。)をいう。
ア 第1号に掲げる中高層建築物の敷地に接する土地(当該土地の北側部分にあっては、敷地境界線から中高層建築物の高さの1.5倍に相当する距離の範囲内にあるものを含む。)
イ 第2号に掲げる劇場等の敷地に接する土地
ウ 第3号に掲げる携帯電話中継基地局鉄塔の中心から当該携帯電話中継基地局鉄塔の高さの1.3倍に相当する距離の範囲内にある土地
(8) 建築紛争 中高層建築物等又はワンルーム形式集合住宅の建築又は築造(以下「建築等」という。)が居住環境に及ぼす影響に関する中高層建築物等又はワンルーム形式集合住宅の建築主等及び近隣住民(以下「当事者」という。)の間の紛争をいう。
(適用除外)
第3条 次に掲げる建築物については、この条例の規定は、適用しない。
(1) 法第18条第3項の規定による確認済証の交付を受けて建築する建築物
(2) 法第85条の規定の適用を受ける仮設の建築物
(市の責務)
第4条 市は、中高層建築物等及びワンルーム形式集合住宅の建築等に関し、安全で快適な居住環境の保全及び形成が図られるよう指導するとともに、建築紛争が生じたときは、迅速かつ適正な調整に努めなければならない。
(建築主等の責務)
第5条 建築主等は、中高層建築物等及びワンルーム形式集合住宅の建築等に関し、周辺の居住環境に十分に配慮するとともに、市民の良好な近隣関係を損なわないよう努めなければならない。
(当事者の責務)
第6条 当事者は、建築紛争が生じたときは、相互の立場を尊重し、互譲の精神をもって、これを自主的に解決するよう努めなければならない。
第2章 建築主等の配慮等
(建築計画上の配慮)
第7条 中高層建築物等の建築主は、当該中高層建築物等の建築計画の策定に当たっては、当該建築物が他の建築物の日照、通風その他周辺の居住環境に及ぼす影響に配慮しなければならない。
(工事に関する措置)
第8条 中高層建築物等の建築主等は、当該中高層建築物等の工事が周辺の居住環境に著しく影響を及ぼすおそれがあるときは、次に掲げる事項について、当該工事の着手前に近隣住民と協議するとともに、必要な措置を講じなければならない。
(1) 工事車両の通行及び駐車に関すること。
(2) 工事に伴う騒音及び振動の防止又は軽減に関すること。
(3) 工事に伴うほこり等の飛散防止に関すること。
(4) 工事により生じるおそれのある危害の防止に関すること。
(5) その他市長が必要と認める事項
(テレビジョン電波の受信障害に対する措置)
第9条 中高層建築物の建築主等は、当該中高層建築物の建築によりテレビジョン電波の受信障害が生じ、又は生じるおそれがあるときは、受信の状態の調査を行い、その被害を受け、又は受けるおそれがある者と協議したうえで、当該障害を防止し、又は解消するために必要な措置を講じなければならない。
第3章 建築計画等の周知の手続
(標識の設置)
第10条 中高層建築物等の建築主は、当該中高層建築物等の建築計画を近隣住民に周知させるため、規則で定めるところにより、当該建築計画の概要を記載した標識を設置しなければならない。
2 前項の標識の設置期間は、当該中高層建築物等に係る法第6条第1項又は法第6条の2第1項の規定による確認の申請(以下「確認申請」という。)をしようとする日の20日前の日から当該中高層建築物等の工事に着手する日までの間とする。
3 中高層建築物等の建築主は、第1項の標識を設置したときは、規則で定めるところにより、速やかにその旨を市長に報告しなければならない。
(事前説明)
第11条 中高層建築物等の建築主は、規則で定めるところにより、近隣住民に対し、当該中高層建築物等の建築計画及び工事の施工方法(以下「建築計画等」という。)についての説明(以下「事前説明」という。)を行わなければならない。
2 中高層建築物等の建築主は、当該中高層建築物等の設計者、工事監理者、工事施工者その他当該中高層建築物等の建築計画等について十分な知識を有する者に委託して、事前説明を行わせることができる。
3 近隣住民は、中高層建築物等の建築主から当該中高層建築物等に係る事前説明の申出があったときは、これに応じなければならない。
4 中高層建築物等の建築主は、当該中高層建築物等の建築計画等について、近隣住民から説明会の開催を求められたときは、これに応じるよう努めなければならない。
5 中高層建築物等の建築主は、近隣住民の長期不在その他その責めに帰することができない事由により当該中高層建築物等に係る事前説明をすることができないときは、事前説明をすることを要しない。この場合において、当該建築主は、当該中高層建築物等の建築計画等を近隣住民が周知するよう努めなければならない。
(管理方法の説明)
第12条 ワンルーム形式集合住宅の建築主は、規則で定めるところにより、近隣住民に対し、当該ワンルーム形式集合住宅の管理の方法についての説明(以下「管理方法の説明」という。)を行わなければならない。
2 管理方法の説明は、当該ワンルーム形式集合住宅が第2条第1項第1号に該当する場合は、事前説明と同時に行わなければならない。
2 前項の規定による報告は、確認申請をする際にしなければならない。
第4章 中高層建築物等及びワンルーム形式集合住宅の建築に係る指導
(中高層建築物等の建築に係る指導)
第15条 市長は、中高層建築物等の建築主が当該中高層建築物等に係る事前説明を十分に行わず、又は近隣住民が事前説明の申出に応じない等の事由により、当事者間において事前説明が十分になされていないと認めるときは、当事者に対し、事前説明の促進について指導することができる。
(建築主による措置)
第16条 ワンルーム形式集合住宅の建築主は、規則で定めるところにより、次に掲げる事項について必要な措置を講じなければならない。
(1) 住戸の専用床面積及び天井の高さに関すること。
(2) 引っ越し、荷下ろし等の作業ができる場所に関すること。
(3) 自転車及びバイクの置場に関すること。
(4) ごみ置場に関すること。
(5) 敷地の緑化に関すること。
(6) その他市長が必要と認める事項
(管理人室の設置等)
第17条 ワンルーム形式集合住宅の建築主は、当該ワンルーム形式集合住宅を適正に管理し、及び近隣住民からの問い合わせ等に迅速に対応できるよう、管理人室を設置し、当該管理人室に常駐する管理人を置かなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、これに代えて第三者に当該ワンルーム形式集合住宅の管理を委託することができる。
(1) 当該ワンルーム形式集合住宅の住戸(専用床面積が25平方メートル以下のものに限る。)の数が30戸未満であるとき。
(2) 当該ワンルーム形式集合住宅について適正な管理がなされると市長が認めるとき。
2 ワンルーム形式集合住宅の建築主は、前項の規定により管理人を置き、又は第三者に管理を委託したときは、規則で定めるところにより、当該ワンルーム形式集合住宅の管理の方法を記載した表示板を設置しなければならない。
(管理規約の作成)
第18条 ワンルーム形式集合住宅の建築主は、規則で定めるところにより、管理規約を作成し、当該ワンルーム形式集合住宅の入居者に当該管理規約を遵守するよう指導しなければならない。
第5章 調整
(調整の申出)
第19条 当事者は、建築紛争が生じた場合において、第6条の規定に基づく自主的な解決の努力を尽くしてもなおその解決に至らないときは、当該建築紛争の調整(以下「調整」という。)を市長に申し出ることができる。
(調整)
第20条 市長は、前条の規定による調整の申出があったときは、当事者間に合意が成立するよう調整を行うものとする。
2 市長は、必要があると認めるときは、調整の場に関係者の出席を求め、説明若しくは意見を聴き、又は必要な資料の提出を求めることができる。
3 市長は、必要があると認めるときは、当事者に対し、調整の実現を不可能にし、若しくは著しく困難にする行為を制限し、又は調整を円滑に行うために必要な措置を講じるよう指導することができる。
(調整の打切り)
第21条 市長は、調整に係る建築紛争について、当事者間に合意が成立する見込みがないと認めるときは、調整を打ち切ることができる。
(手続の非公開)
第22条 調整の手続は、公開しない。
第6章 調停
2 前項の規定による調停の申出(以下「調停の申出」という。)は、当該建築紛争に係る中高層建築物等の工事の着手前に行わなければならない。
3 市長は、調停の申出が当事者の一方からなされた場合において、相当の理由があると認めるときは、他の当事者に対し、相当の期間を定めて、これに同意するよう勧告することができる。
(調停の付託)
第24条 市長は、調停の申出が当事者の双方からなされたとき、又は当事者の一方からの調停の申出について他の当事者が同意したときは、次条に規定する久留米市中高層建築物等建築紛争調停委員会に調停を付託するものとする。
(中高層建築物等建築紛争調停委員会)
第25条 市長の附属機関として、久留米市中高層建築物等建築紛争調停委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会は、この条例の規定により調停を行うとともに、市長の諮問に応じ、建築紛争の調停に関する事項を調査し、及び審議する。
3 委員会は、委員6人以内をもって組織する。
4 委員は、建築、法律又は行政の分野に関し学識経験のある者その他市長が適当と認める者のうちから市長が任命する。
5 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また同様とする。
(調停)
第26条 委員会は、第24条の規定による調停の付託があったときは、当事者間に合意が成立するよう調停を行うものとする。
2 委員会は、必要があると認めるときは、会議に関係者の出席を求め、説明若しくは意見を聴き、又は資料の提出を求めることができる。
3 委員会は、必要があると認めるときは、当事者に対し、調停の実現を不可能にし、若しくは著しく困難にする行為を制限し、又は調停を円滑に行うために必要な措置を講じるよう勧告することができる。
4 委員会は、当事者の主張その他当該建築紛争に係る一切の事情を考慮したうえで調停案を作成し、これを当事者に提示するものとする。
5 当事者は、前項の規定により提示を受けた調停案(以下「調停案」という。)について、委員会が定める期間内に、これに同意するか否かを回答しなければならない。
(調停の打切り)
第27条 委員会は、調停に係る建築紛争について、次の各号のいずれかに該当する場合は、調停を打ち切ることができる。
(1) 当事者間に合意が成立する見込みがないと認めるとき。
(2) 当事者の双方若しくは一方が調停案について同意せず、又は前条第5項の期間内に回答しないとき。
2 前項の規定により調停が打ち切られたときは、当事者は、当該建築紛争について、再度の調停を申し出ることはできない。
(報告)
第28条 委員会は、調停が終了したとき、又は前条第1項の規定により調停を打ち切ったときは、速やかにその旨を市長に報告しなければならない。
(手続の非公開)
第29条 調停の手続は、公開しない。
第7章 指導及び勧告等
(指導及び勧告)
第31条 市長は、中高層建築物等又はワンルーム形式集合住宅の建築主が次の各号のいずれかに該当する場合は、当該建築主に対し、期間を定めて、建築紛争の予防と調整のために必要な措置を講じるよう指導し、又は勧告することができる。
(1) 第3章に規定する建築計画等の周知の手続の全部又は一部を実施しないとき。
(公表)
第32条 市長は、前条の規定による指導又は勧告を受けた建築主が正当な理由がなくこれに従わないときは、その旨を公表することができる。
第8章 雑則
(委任)
第33条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成15年4月1日から施行する。