○久留米市食料・農業・農村基本条例

平成16年3月30日

久留米市条例第11号

(前文)

久留米市の農業は、九州一の大河筑後川と緑豊かな耳納連山に育まれた筑後平野の肥沃な大地のもとで、先人たちの英知と努力によって様々な困難を乗り越えながら、多彩な農産物を生産し、県内有数の産地を形成してきた。

農業及び農村は、水と土を大切にしながら農産物を生産し、生命活動の源である食料を供給するだけでなく、四季折々の美しい景観の形成、水源のかん養、洪水の防止、生物多様性の保全等の多面的な機能を発揮する役割を担い、市民生活に大きな恵みをもたらしてきた。

しかしながら、近年、経済の国際化、農産物貿易の自由化、都市化の進展、食生活の多様化を背景に、農業者の減少や高齢化、農地の減少、食料の安全性への懸念等の食料、農業及び農村をめぐる様々な問題が発生している。

このようなことから、今後、本市の農業及び農村の振興を進めていくためには、農業者の意欲向上はもとより、市民一人ひとりが、食料、農業及び農村の市民生活に果たしている役割の重要性についての理解を深め、地域で生産される農産物の域内での消費の促進を図ることが大切である。

私たちはここに、市民、農業者及び農業団体、食品産業の事業者並びに行政との協働により、食料に対する理解を深め、農業を本市の基幹産業として育みながら、魅力ある農村を次世代に引き継ぐとともに、その進むべき道を明らかにするため、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、本市の食料、農業及び農村のあり方についての基本理念及びその実現に必要な基本的施策に関する事項を定めることにより、食料、農業及び農村に対する市民の理解を深めるとともに、性別・年齢を問わず農業者一人ひとりの持てる力が発揮され、安全で安心できる農産物の生産、流通及び消費が図られ、もって本市の農業及び農村が持続的に発展し、豊かで住みよい地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(基本理念)

第2条 食料は、健康で豊かな生活を支えるものであることから、安全で安心できる農産物が安定的に生産され、供給されることにより、将来にわたって食料に対する市民の信頼が確保されるとともに、地域で生産される農産物の域内での流通及び消費を促進し、食の重要性に対する理解の促進と地域特有の食文化の継承が図られなければならない。

2 農業においては、農地、農業用水その他の農業資源及び多様な担い手が確保され、これらが効率的に組み合わされるとともに、自然環境と調和した持続的な発展が図られなければならない。

3 農村は、食料の生産のみならず、良好な景観の形成、水源のかん養、洪水の防止、生物多様性の保全、文化の伝承等の多面的な機能(以下「多面的機能」という。)を有する自然と人間との共生の場として整備され、及び保全されなければならない。

(市の責務)

第3条 市は、前条に規定する基本理念にのっとり、食料、農業及び農村に関する基本的かつ総合的な施策を推進する責務を有する。

(農業者及び農業団体の責務)

第4条 農業者及び農業団体は、自らが安全な食料の生産者であり、基本理念に示す農村における地域づくりの主体であることを認識し、自ら生産する農産物について積極的に情報を発信するとともに、安全で安心できる農産物を安定的に生産し、農業及び農村の振興に関し主体的に取り組む責務を有する。

(市民の役割)

第5条 市民は、食料、農業及び農村が市民生活に果たしている役割の重要性についての理解と関心を深め、地域で生産される農産物の積極的な消費及び健康で豊かな食生活の実践に努めるものとする。

(事業者の役割)

第6条 食品産業の事業者は、食料、農業及び農村が市民生活に果たしている役割の重要性についての理解と関心を深め、消費者への安全で安心できる食料の円滑かつ安定的な供給に努めるものとする。

(基本的施策)

第7条 市は、第2条に規定する基本理念にのっとり、次に掲げる事項を、食料、農業及び農村の基本的な施策として、各々の施策相互の有機的な連携を図りつつ、推進するものとする。

(1) 消費者が安全で安心できる農産物を入手し、食及び農に対する信頼感を持つために必要な産地情報の提供等の施策

(2) 学校、家庭及び地域社会等と連携した食と農に対する教育等による健全な食生活への理解の促進及び地域で生産される農産物を使った地域特有の食文化の継承に必要な施策

(3) 農業及び農村に関する情報の提供、生産者と消費者の交流等による農業及び農村の有する生産及び多面的機能に対する市民の理解の促進に必要な施策

(4) 農業の生産基盤である生産ほ場、農道及び農業用用排水路等の整備並びに用水の確保、遊休農地の解消等による優良農地の確保に必要な施策

(5) 効率的で安定的な農業経営体を基本に、女性農業者、高齢農業者、新規就農者等の多様な担い手の育成及び確保に必要な施策

(6) 需要の動向に応じた高品質優良農産物の生産及び産地銘柄の確立等による収益性の高い農業経営及び競争力のある産地の育成に必要な施策

(7) 農業者及び農業団体、食品産業の事業者並びに消費者の連携強化による地域で生産される農産物の域内での流通及び消費の促進に必要な施策

(8) 産学官共同によるバイオテクノロジー等の農業関連技術の研究開発及び製品化に必要な施策

(9) 農薬及び肥料の適正な使用、家畜排せつ物等有機物資源の有効利用による土づくり等に基づく環境保全型農業及び有機農業の推進に必要な施策

(10) 農業及び農村の持つ多面的機能を十分に発揮させるための環境整備の推進に必要な施策

(11) 女性農業者の社会的経済的地位の向上、就業条件の整備及び農業政策等の意思決定への参画促進等の環境整備による農村における女性の持てる力が発揮される男女共同参画社会の確立に必要な施策

(食料・農業・農村基本計画の策定)

第8条 市長は、前条に規定する基本的施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、安全で安心できる食料の供給並びに農業及び農村の振興に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。

2 市長は、基本計画を定めようとするときは、あらかじめ広く市民の意見が反映されるよう十分に配慮するとともに、第11条に規定する久留米市食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。

3 市長は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

4 市長は、食料、農業及び農村をとりまく情勢の変化を勘案し、おおむね5年ごとに基本計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。

5 第2項及び第3項の規定は、基本計画の変更について準用する。

(実施状況の公表)

第9条 市長は、本市の食料、農業及び農村の状況並びに基本計画に基づく施策の実施状況をとりまとめ、毎年、公表するものとする。

(推進体制)

第10条 市長は、安全で安心できる食料の供給並びに農業及び農村の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための体制の整備に関し必要な措置を講ずるものとする。

(食料・農業・農村政策審議会)

第11条 市に久留米市食料・農業・農村政策審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項を調査審議する。

(1) 基本計画の策定、施策の実施状況及び変更に関すること。

(2) 前号に掲げるもののほか、食料、農業及び農村に関する重要な事項

3 前2項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

(施行期日)

1 この条例は、平成16年7月1日から施行する。

(準備行為)

2 この条例を施行するために必要な準備行為は、この条例の施行の日前においても行うことができる。

久留米市食料・農業・農村基本条例

平成16年3月30日 条例第11号

(平成16年7月1日施行)